自然薯(じねんじょ)といえば、食欲をそそる「とろろ汁」を思い出します。
栄養価がきわめて高く、疲労回復にも最適と言われていますね。
そんな自然薯は、栽培するのがとても難しい野菜でもあります。
今回は、3代にわたって自然薯栽培に取り組む「なかじま自然薯園」にお邪魔しました。
この記事では、3代目園主・中嶋雄一さんのお話をもとに、なかじま自然薯園をご紹介します。
なかじま自然薯園の特色
なかじま自然薯園は、牧之原市で自然薯栽培を行なっています。
初代は雄一さんの祖父で、お茶栽培のかたわら自然薯を始めました。
2代目である雄一さんの父・拓雄さんがお茶をやめ、自然薯専業に。
2010年には、3代目の雄一さんが経営主となりました。
静岡県の在来種をこだわりの栽培法で育て上げ、その味は世界的なシェフも絶賛するほど。
ここから、なかじま自然薯園の特色をくわしく見ていきましょう。
自然薯は山芋と呼ばれる種類のなかで、日本原産のもの。
海外原産の山芋(長芋、大和芋)と比べて各種栄養価が高く、老化防止や生活習慣病に効果的な「ビタミンE」は約20倍も含まれています。
自然薯は古くは「山薬」と呼ばれ、漢方としても使用されてきました。
味・香りが際立つ「静岡農試60号」を栽培
なかじま自然薯園で育てているのは、「静岡農試60号」という品種。
35年ほど前に、県内に自生する自然薯120本が採取され、一番おいしかったものが元になりました。
特徴は、上品な香りと味、そしてきめの細やかさです。
なかじま自然薯園ではそれ以後、「静岡農試60号」を守り続けてきました。
栽培が難しい自然薯を守り続けてきた背後には、多くの試行錯誤があったそうです。
そして今では県内の他の生産者も、ここで作られたムカゴや種イモを使って自然薯を生産しています。
とても貴重な存在ですね。
ムカゴとは自然薯の実のこと。
葉の付け根のあたりにできる球状の肉芽です。
ムカゴを植えると芽を出し、種イモへと成長します。
また、ムカゴそのものも栄養価が高く、食材としても利用されています。
3年かけて育て上げる、こだわりの農法
自然薯の栽培にはいくつかの方法があり、一般的には完成した芋を切り取って種イモとします。
この場合、1年間で自然薯を育てることができます。
しかしなかじま自然薯園では、原種のムカゴを採取するところから始めます。
その方が品質にばらつきがなく、おいしさを保ちやすいからです。
原種からムカゴを取るのに1年、ムカゴから種イモを育てるのに1年かかるので、最終的に自然薯ができるまでには3年もの歳月を要します。
まさに、おいしさを追求した栽培方法ですね。
この画像にあるのは、ムカゴ専用ハウス。
病気の原因となる虫の侵入を防ぐため、細心の注意を払いながら育てます。
他の生産者もここで作られたムカゴを使用するために雄一さんのプレッシャーは大きく、大失敗に終わる悪夢を見ることもあるとか>_<
この努力、頭が下がります。
そしてムカゴから1年かけて育てた種イモがこちら。
この種イモ作りも、大変に神経を使うそうです。
完成した種イモは、広い畑に植えていきます。
葉やつるが生い茂った様子がこちらです。
正直に言うと私は、自然薯栽培と聞いて「山の中で育てているのかな」と思っていたのですが、全然違いましたね^^;
そして驚きの収穫シーンがこちらです。
なんと、自然薯が横向きに育ってるんですね。
もちろん本来は真下に伸びていくのですが、あらかじめ下にトタンを埋めておき、自然薯がトタンに沿って横にまっすぐ伸びていくようにしているそうです。
また、トタンの上には細長い袋が置かれ、自然薯はその中で育ちます。
ですから収穫時は、この袋を取り出せばOKというわけです。
ちなみにこの袋の中には、山から採取してきた土を入れておくそう。
根が張る部分と自然薯が育つ部分で土を変えることにより、自然の山と似た環境を再現しているのだそうです。
大変勉強になりました!
著名なシェフにも認められた味
こうして栽培された自然薯は、山芋のなかでも別格のおいしさを誇ります。
県内の老舗とろろ汁店や他県の高級旅館でも使用される人気ぶり。
また、世界的に有名な奥田政行シェフも、「世界一の自然薯」と絶賛しています。
雄一さんは「自然薯」=「自然の薯(イモ)」という名前のとおり、いかに自然に近い環境で栽培するかを考えているのだそう。
山に近い環境を再現するために、多くの工夫がなされてきました。
「静岡を”とろろ県”にしたいんです」と語る雄一さん。
その挑戦は、これからも続きます。
なかじま自然薯園の自然薯を買うには
なかじま自然薯園の自然薯を一般の方が買う方法は2つ。
直売所とネット販売です。
直売所
農園に併設された直売所では、一本物の自然薯や真空パックされた自然薯、食べきりサイズの「手作りとろろ」を販売しています。
(「手作りとろろ」は予約販売)
直売所の外には、形の悪いものや折れたものが格安で売られています。
販売時期は、毎年11月から翌年2月ごろまで。
直売所についてくわしくは、以下の記事をご覧ください。
ネット販売
ネットショップの楽天市場でも自然薯の購入が可能です。
お歳暮などの贈答用にもよく利用されているそうですよ。
なお、ネット販売の方は収穫状況によって早期に終了する場合があります。
なかじまさんの自然薯、使ってみました
譲っていただいた自然薯を使って、とろろ汁と自然薯だんご汁を作ってみました。
まずはとろろ汁です。
ひげ根を炙ってから取り除き、皮ごとすり下ろしていきます。
すった自然薯は、箸で持ち上げられる粘りの強さ!
トルコアイスのように長~く伸びます。
そこに味噌汁、卵、しょうゆを加えて完成させたとろろ汁がこちら。
熱々のごはんにかけて薬味を散らし、かきこみます。
芳醇な香りと味で、あっという間に完食してしまいました!
そして「自然薯だんご汁」。
すり下ろして塩を加えるだけですが、しっかりと団子になってくれます。
自然薯だんごはモチモチした食感。
汁にもダシが出ているのか、とても深い味わいに。
これで栄養価も抜群なのですから、自然薯は食べなきゃ損ですね(*^^*)
農園情報
名称 | なかじま自然薯園 |
所在地 | 〒421-0501 静岡県牧之原市東萩間2786 |
電話番号 | 0548-27-3866 |
FAX番号 | 0548-27-3888 |
HP | http://jinenjo60.web.fc2.com |
楽天サイト | https://www.rakuten.co.jp/jinenjo60/ |
生産品目 | 自然薯「静岡農試60号」 |